冬山で究極の贅沢を!カタルーニャ州ピレネー山脈のスキー場

 インターネットの登場以来、旅をカスタマイズすることは当然になりました。遠い外国といえども、あらゆる情報が溢れた現在、自分の趣味趣向に合わせて海外旅行を計画する人も多いでしょう。

 

 今回ご紹介するのは、究極の贅沢旅ともいえる、カタルーニャ州でのスキー旅。欧州スキー場のイメージはスイスやフランスのアルプスが有名かもしれませんが、カタルーニャ州内ピレネー山脈も、ヨーロッパのスキー愛好家にはつとに知られた存在です。

La molina

 州内には全部でアルペンスキー場が11、ノルディックスキー場が6つ存在しています。過去5年ほどのデータによると、カタルーニャのピレネー山脈では、標高が高い地域では積雪増との結果が出るほど。まさに州内のスキー場は標高の高いところに集中しています。


 日本ではバブル時代に誰もがスキーに行ったものですが、スペインでは昔から比較的スキーは地元近隣住民と富裕層のためのスポーツ。国内外から大挙するスキー客でリフト待ちに疲れてしまう—-ということもありません。カタルーニャ州にはスペイン最大級の面積と滑走距離を誇るスキー場がいくつも存在します。

Baqueira

 その中の代表格が「バケイラ・ベレット」スキー場です。州内ピレネー山脈の西寄りに位置し、バルセロナからは車両で約5時間ほどの移動で白銀の世界へ。イベリア半島最大級のこのスキー場は、昨年60周年を迎えましたが、2,27ヘクタールの広大な山の風景の中、171kmの滑走可能距離を誇り、初心者から上級者まで計122の異なったコースがあるという、桁違いに巨大なスキー場なのです。スキーエリアの中でも標高が最も高いのは2200m地点、最大標高差が1100m。スキー上級者ならこの数字を聞いただけでもワクワクするのではないでしょうか。オープン期間は11月末〜4月中旬まで。スキー教室の先生が500人を数えるというのも、家族連れに人気の理由のひとつです。5千台を超える車が駐車可能なパーキング、もちろん周辺のホテルはスキーだけでなくグルメやスパなども提供する、まさに冬の楽園。「バケイラでスキーを楽しむ」というのは、欧州のクリスマス休暇では、最大級に贅沢な旅の代名詞なのです。

Baqueira

 自然を愛するカタルーニャの人々が誇りに思うのは、こうした巨大なスキー場でもサステナビリティを最重視していること。バケイラでは、除雪などスキー場整備のための車両に最新のソフトウェアを搭載、CO2排出とエネルギー消費を最小限にしています。施設建設の素材からも見直し、屋内施設の温度管理を詳細に行い、エネルギー効率を高めているとか。リフト券もリサイクル素材でできています。バケイラ公式APPを携帯に入れておけば、迷子になったりレストランでの行列を待つこともなく、高いコンフォートが約束されています。

Boitaull

 バケイラ周辺にはいくつか別のスキー場も存在します。家族向けに人気で、小規模のため混雑も少ないのが、バケイラから車両で約1時間30分のところにあるボイ・タウイスキー場(Boí Taüll)。小規模とはいえ45kmの滑走可能距離の中に全部で43コースを揃え、最大標高2751mという、日本で言うなら苗場に近いサイズのスキー場です。このスキー場の魅力は、動きやすい規模もさることながら、世界遺産に認定されているボイ渓谷のロマネスク教会群にも近いこと。谷間に縫うように大小9つもの教会がひっそりと佇む姿に、夏場も遠足の人気スポットになっています。アクティブレジャーとは別日にこうした文化遺産を訪ねれば、大自然の中で正反対のカタルーニャの魅力を体感できるはずです。

La molina

 滞在にあまり日数がないけれど1日はスキーをという方には、バルセロナから最も近いスキー場であり、州内ピレネー山脈の東側に位置するラ・モリーナスキー場(La Molina)はいかがでしょう。市内から車両で約2時間。1943年にオープンされたサルダーニャ地域にある、スペイン最古のスキー場です。滑走可能距離は71kmで初級から上級まで66コースのバラエティ。このスキー場は隣接するマセーリャ(Masella)スキー場とキャビン型リフトで繋がっており、2つのスキー場をあわせて全長145kmもの滑走可能距離があるので、ひょっとするとついつい滞在も伸びてしまうかもしれません。

Masella

 州内どこのスキー場も宿泊施設、レンタル施設は充実しています。旅慣れた方、スキーを始め冬山レジャーの愛好家には、ぜひ一度試していただきたい、カタルーニャ州の冬の旅のオプションです。もちろん、こうした施設では夏のアウトドア・レジャーも楽しめますので、一度HPを覗いてみてはいかがでしょうか。

小林 由季(こばやし ゆき)

小林 由季(こばやし ゆき)

1995年よりスペイン在住。ライター、通訳、コーディネーター。雑誌「料理通信」「PRECIOUS」「PEN」などへの執筆のほか、「世界遺産」「世界くらべてみたら」「アナザースカイ」などTVコーディネートも多数手掛ける。平成中村座スペイン公演(マドリード、2018年)、OBS(オリンピック放送機構)にてブロードキャスティング・ロジスティックス・マネジャー補佐(東京オリンピック 2021年)を務めるなど、呼ばれればどこにでも行きなんでもやるフットワークと適応性あり。趣味は料理、運動、読書。距離的には遠いスペインと日本を、より身近に感じて欲しいと願いつつ、日々精進中。