金井 節子(以下、節子):
今回の旅、タクシーをいっぱい使ったよね。バルセロナは公共交通がすごくバリアフリーで、普通に市内を移動するだけなら、タクシーなしでも十分だったけど、郊外のワイナリーに行くときとか、空港から荷物を運ぶときは、タクシーがあると本当に安心だなって思った。
織田 友理子(以下、友理子):
そうだね。私は重度の障がいがあるから、車いすのまま乗れるタクシーがないと、鉄道が通っていない郊外なんかは特に行けないんだよね。旅行ではまずは鉄道などの公共交通を使えるかがすごく重要だけど、その次に私みたいな重度でも訪問できるサービスがあるかも大事だよね。福祉タクシーが移動手段としてあるのは、本当にありがたいよ。
節子:
今回いろんな福祉タクシーに乗ったけど、バルセロナで多いのはフォルクスワーゲン(Wolkswagen)の「キャディ(Cady)」という車種だったね。友理子の大きな車いすだと本当にギリギリだったけど、なんとか入った感じだったね。
友理子:
そうそう!でも、普通の手動車いすや簡易電動車いすの方は全然大丈夫だと思うよ。最初は小さめの車で「まあ、これでもいけるか」って思ってたけど、途中から「やっぱり大きい車の方がいいな」ってなった(笑)。私の場合は体幹が弱いから、背もたれを倒して負担のない体勢で体を支えないと辛いんだよね。その点、リクライニングも下げられる、揺れも少ない大型車は乗っていて安心感が全然違ったし、とても快適だった!
節子:
そうだね。私は車に詳しくないけど、今回色々覚えたよ(笑)。大型の車いすを利用している人は、事前に車種を指定しておくと、更に快適に移動できそうだね。フィアット(Fiat)の「タレント(Talento)」や「スクード(Scudo)」という車種が友理子さん指定の車だったね(笑)。でも、タイヤを外せる車いすや、折りたたみができる車いすで移乗ができる方は、流しのタクシーに問題なく乗れるよね。
友理子:
そうだね。私も簡易電動車いすで移乗ができた頃は、普通のタクシーに乗っていたので、さらに気軽にタクシーは利用できた。運転手さんも快く乗せてくれたよ。
友理子:
空港から市内に行く方法はバスや電車、地下鉄と様々あるけど、荷物が多いときはやっぱりタクシーが安心だなぁ。
節子:
そうだね。空港のタクシー乗り場には黄色いジャケットを着た係員がいるから、その人に車いす対応のタクシーをお願いすれば案内してくれるよ。もしその場に車いす対応タクシーがないときは、電話で呼ぶ必要があるから、タクシー会社の番号を事前に調べておくと安心だね。
友理子:
電話ってハードル高いよね…。
節子:
そうなんだよね。でも、メールやメッセージで予約できるタクシー会社もあるの。WhatsAppというメッセージングアプリを使った予約に対応しているタクシー会社もあるので、オススメかな。
節子:
まずは、言語の面でも、電話でタクシーを呼ぶ場合は、ホテルでお願いするのが一番安心だね。いずれにせよ、早めに予約しておくのが安心。タクシー会社によるのかもしれないけど、友理子の場合は車種を限定していたからなおさら、前日もしくはもっと前に、予約するようにとの事だったね。
予約する時は、以下の項目を整理してお願いするといいよ。(日本語 / 英語 / スペイン語)
・日付 / Date / Fecha
・迎え時間 / Pick-up Time / Hora de recogida
・乗客人数 / Passengers (Pax) / Pasajeros (Pax)
・車いす / Wheelchair / Silla de ruedas
・迎え場所 / Pick-up Location (Origin) / Lugar de recogida (Origen)
・降車場所 / Drop-off Location (Destination) / Lugar de destino (Destino)
タクシーの運転手さんと話したときに、これまで車いすで一人旅で来ていた女性を乗せた話や、タクシーを一日借りて郊外に行った家族など、色々なお客さんを乗せているようで、地元の人に福祉タクシーが移動手段としてとっても強い味方なんだなと思ったよ。
友理子:
車体が揺れないようにゆっくり気を使って運転して下さったりもして、優しい方が多かったね。
節子:
そうだったね。マドリードに行って驚いたのが、タクシーを前日に予約できなかったこと。バルセロナでは事前の予約が必須だったからびっくりしたんだけど。マドリードではその場でタクシーをアプリや電話で呼んで、タクシーが来るまで待つという方法だったね。
友理子:
いつも時間通りに来てくれたけど、タクシーの乗り方ひとつ取ってみても、その土地によって方法が変わるので、旅行をするときに事前に手順がわかっているとありがたいね。
節子:
料金については、参考程度だけど、タクシーメーターは、一般のタクシーとは変わらない料金設定だそう。異なるのはタクシー利用の最低料金で、タクシー会社や乗車地、時間帯によって変動するけど、一般のタクシーが約7ユーロのところ、福祉タクシーは25ユーロ前後くらいかな。
友理子:
一般のタクシーメーターと同じなのは助かるね。地下鉄やバスでは行きづらい場所もあるから、使い分ければいろんなところに行けていいね。
友理子:
私が旅行に行くと、地元の人たちが使っている公共交通を使ってみるのが好きなんだよね。その土地の人の生活が見えるというか。でも、これだけ見どころいっぱいのバルセロナは、ゆっくり時間が取れない観光客にはツーリストバスって強い味方だよね。私も数年前に乗ってみたけど、網羅的に知れて良かったよ。
節子:
そうなの、これまでの話でも分かるように、バルセロナの公共交通はバリアフリーが徹底してるよね。だから、観光客が使うツーリストバスもちゃんと車いす対応されているんだよ。1日券や2日券があって、30ユーロくらいから乗れて、その間にどれだけ乗り降りしても良いから本当に効率的に回れるね。
友理子:
まずは、ツーリストバスで街の全体を理解するのもいいね。このバスは地元の人が乗っているバスと同じ、スロープが出てくるタイプだね!
節子:
そう、違いは2階建てということと、乗る時にイヤホンをもらって、街を見ながら音声ガイドを聞けることかな。日本語で詳しく解説してくれるし、簡単なルートで気軽に乗り降りできるのが良いね。
友理子:
2階建てのバスだと、上の階には車いすでは行けないけど、それでも障害者割引もあるし、乗ってみる価値はあると思う!
節子:
これまでバルセロナ市内からちょっと郊外まで、色んな移動手段を紹介してきたね。
友理子:
バルセロナでは、車いすでも公共交通機関を利用しやすい環境が整っているね。道もフラットで段差もあまりなくて、海外の中でも、バルセロナは圧倒的に車いすで動き回りやすい地域だと思う!もちろん、全ての場所でアクセス可能というわけではないけど、行きたい場所があればどうにか解決策が揃っているかなという印象だよね。
読者の皆さんも、ぜひリサーチして挑戦してみてください!
1980年千葉県生まれ。進行性の筋疾患による遠位型ミオパチーによる中途障害者。電動車いす利用者。一般社団法人WheeLog代表理事、NPO法人ウィーログ代表理事およびNPO法人PADM(遠位型ミオパチー患者会)代表。2014年にYouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」開設。2017年にバリアフリーマップ「WheeLog!」アプリをリリース。“車いすでもあきらめない世界をつくる”をミッションに活動を展開する。Googleインパクトチャレンジ グランプリ、STI for SDGs文部科学大臣賞、国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰、MIT Solve Solver Teams、ドバイ万博 Expo Live Global Innovator、国内外で多くのアワードを受賞している。一児の母。
1983年千葉県生まれ。2004年にイギリス・グラスゴー大学に留学。2007年、創価大学卒業。2010年、第36回日墨交流計画研修生としてメキシコ国立自治大学に留学。学生時代にヨーロッパ各国を旅行をした他、フィリピン、アメリカの短期留学、デンマークと中国でのインターンシップも経験する。2012年、結婚を機に渡西。2014年、日本建築家協会(JIA)の推薦を受け欧州大学マドリッド校(European University of Madrid)大学院を修了し、建築修士号を取得。2016年より5年間、日建設計バルセロナ支店でカンプ・ノウ スタジアムの改築の建築計画・設計に携わる。2023年からWheeLog事務局に加わる。二児の母。