はじめまして。私は日本に住む車いすユーザーの織田友理子です。私はこれまで世界20カ国以上を車いすで訪れてきました。
バルセロナは日本でも人気の観光地ですが、車いすでは行けないと思っている人も多いのではないでしょうか?でも、実際にはバルセロナは、車いすユーザーも安心して楽しい旅行ができる素敵な場所なんです。ただ、残念なことに、日本の皆さんにそうした魅力が伝わっていないのが現状です。
バルセロナは私の妹・節子が住んでいることもあって、これまで3回、車いすで訪問したことがあります。夏・冬・秋に訪れたのですが、どの季節も本当に過ごしやすくて感動しました。そこで今回、車いすユーザーなどの障害者でも楽しめるバルセロナの魅力を、妹の節子と会話形式でたっぷりお伝えしたいと思います。
織田友理子:
バルセロナの有名な通りといえば、やっぱりランブラス通りだよね。観光客は絶対必ず行くところだよね。 でもそういう所ってバリアフリーが大丈夫なのかなって、いつも初めて行く都市の中心街はすごく心配なんだよね。 実は今までに中心街で段差がたくさんあったり、路面がガタガタだったりと大変な思いをしてきたりしていて。でもランブラス通りは移動しやすかった。
金井節子:
うん。それはそうだね。ランブラス通りはバルセロナの中心に位置するカタルーニャ広場からコロンブスの記念塔まで続く通りで、大道芸人がたくさん出ていて、地元の人と観光客でいつも賑わっているんだ。途中にあるボケリア(サン・ジュセップ市場)にも行ったよね。そこで生ハムを食べて、その美味しさに感激して、「生ハムの足一本買って持って帰りたい!」って言っていたのを覚えてるよ(笑)。
友理子:
残念ながら、スペインを代表する美味しい生ハムもサラミもチーズも検疫法で日本には持ち帰れないので、読者の皆様はご注意ください。そのため私は現地で思いっきり食べるようにしています。フランスのパリで言うと、シャンゼリゼ通りのような感じの通りもあったよね。
節子:
それはグラシア大通りだね。グラシア大通りは高級ショップ、隣の通りのランブラ・デ・カタルーニャ通りにはレストランが軒を連ね、世界遺産のカサ・ミラ、カサ・バトリョなどの美しい建築物が立ち並ぶエリアだよ。
友理子が来たときは、グラシア大通りからカタルーニャ広場を通ってランブラス通り、コロンブスの記念塔を通ってバルセロネータの海に行ったね。
友理子:
ずっと下って行って最後に海だったのは本当に感動した。海の話はここでは置いておくとして…
もし地下鉄で移動するなら、どこからスタートするのが便利かな?
節子:
ディアゴナル駅かな。もちろんバス停もあるから、ディアゴナル駅の周辺で降りてグラシア大通りを散歩するといいね。
友理子:
このルートは地形的に海に向かって標高が低くなっているから、緩やかな坂道になっているんだよね。急じゃなくて、気づけば車いすの車輪がすーっと進んでいるぐらいの坂道だから、この通りは車いすの人たちにも気に入ってもらえるんじゃないかなと思った。
節子:
確かに!電動車いすではない人の介助者にも嬉しいね。もちろんベビーカーの人にも、子供にもね。あの緩やかな坂道のお陰で身も軽く進んで行けるんだよね。
友理子:
歩くだけで本当に楽しいんだよね。とっても穏やかな繁華街って感じで。海外に行くと客引きがギラギラしてる感じでちょっと引いちゃうんだけど、ここはそんなにガツガツしてないところが良かったな。
節子:
そうだね。
ディアゴナル駅→グラシア大通り→カタルーニャ広場→ランブラス通りからコロンブスの記念塔を通って、バルセロネータの海というルートは安心しておすすめできるルートだね!
① ディアゴナル駅(Diagonal)
↓
② グラシア大通り(Passeig de Gràcia)
↓
③ カタルーニャ広場(Plaça de Catalunya)
↓
④ ランブラス通り(La Rambla)
↓
⑤ コロンブスの記念塔(Monument a Colom)
↓
⑥ バルセロネータ(La Barceloneta)
友理子:
途中にはブランドの路面店や百貨店、カフェ、市場もあるし、見どころ沢山で、あっという間に長距離を歩いている感じ。思い出したら本当に行きたくなっちゃった。
あと、ランブラス通りから小さな路地に入って、旧市街に行ってみるのも小さな冒険で楽しかったよ。旧市街なのに、意外と道が平坦だったところもあったのを覚えてる。
節子:
そうだよね。介助者だけでなく、ガタガタ道は車いすに乗っている人も体に負担がかかって大変だから、道路が舗装されていると有難いよね。特にヨーロッパの旧市街は石畳が多くて大変なこともあるよね。バルセロナの旧市街でも今では古い石畳はあまり見なくなったね。
他にここでしか見られないとか食べられないものはあるの?食べ歩きとかできたらすごく楽しいよね。私はこの近辺で美味しいジェラートを食べたり、バルでタパスを食べたりカフェでお茶したり、 食べ物に目がないからどうしようかなって目移りしちゃったよ。 生搾りオレンジジュースも美味しいよね!
節子:
そうだね!オレンジジュースやジェラートの他にも、オルチャータ(horchata)と呼ばれる飲み物は日本では飲めないかもね。街を歩いて疲れたときは、バルで冷たくて甘いオルチャータを飲んでみるのもおすすめかも!見た目は乳製品のようなんだけど、植物の茎が原料なの。冬の寒い時期は、濃厚なホットチョコレート(chocolate)にチュロス(churros)もいいね。実はスペインはチョコレート文化の発祥の地なんだよ。
友理子:
スペインのチョコレート、美味しいよね。イチジクのチョコレートが大好きなんだけど、日本に帰省する時に、持ってきてくれるスペインならではのオレンジやくるみのチョコレートなど、いろんなバリエーションを楽しませてもらってるよ。食べ物の話をしていたら、またバルセロナに観光しに行きたくなっちゃった。
節子:
残念ながら、バルセロナはスリが多いので、特に観光客で賑わう場所では本当に気をつけないといけないね。車いすだからといって、気を抜いたら絶対ダメ。
友理子:
そうだったね。そういえば、パリの地下鉄で私の介助をしてくれていたせっちゃん、スリにあっちゃったよね。「お手伝いしましょうか?」みたいな感じで手を貸してくださった若者たちだったよね。スリっていかにもな人じゃないんだなって思ってびっくりした。
節子:
そんな事もあったね。とにかく、せっかくの旅が台無しになってしまうので、安全な日本の環境が当たり前になっている私たちは、特に気を引き締めて行かないといけないね。是非、楽しい旅行にしてもらいたいです。
1980年千葉県生まれ。進行性の筋疾患による遠位型ミオパチーによる中途障害者。電動車いす利用者。一般社団法人WheeLog代表理事、NPO法人ウィーログ代表理事およびNPO法人PADM(遠位型ミオパチー患者会)代表。2014年にYouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」開設。2017年にバリアフリーマップ「WheeLog!」アプリをリリース。“車いすでもあきらめない世界をつくる”をミッションに活動を展開する。Googleインパクトチャレンジ グランプリ、STI for SDGs文部科学大臣賞、国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰、MIT Solve Solver Teams、ドバイ万博 Expo Live Global Innovator、国内外で多くのアワードを受賞している。一児の母。
1983年千葉県生まれ。2004年にイギリス・グラスゴー大学に留学。2007年、創価大学卒業。2010年、第36回日墨交流計画研修生としてメキシコ国立自治大学に留学。学生時代にヨーロッパ各国を旅行をした他、フィリピン、アメリカの短期留学、デンマークと中国でのインターンシップも経験する。2012年、結婚を機に渡西。2014年、日本建築家協会(JIA)の推薦を受け欧州大学マドリッド校(European University of Madrid)大学院を修了し、建築修士号を取得。2016年より5年間、日建設計バルセロナ支店でカンプ・ノウ スタジアムの改築の建築計画・設計に携わる。2023年からWheeLog事務局に加わる。二児の母。