金井 節子(以下、節子):
バルセロナをはじめ、カタルーニャには、世界的に有名な3人の芸術家、パブロ・ピカソ、ジョアン・ミロ、そしてサルバドール・ダリなどの世界的芸術家たちの足跡が色濃く残っているよ。
織田 友理子(以下、友理子):
そうなんだね!バルセロナはコンパクトな街で魅力がギュッと詰まっているし、とても芸術的で癒されるよね。私も次回の滞在では行きたいな。見るスポットが沢山あって、まだまだ制覇できていない所が沢山あるんだよね。今聞いた画家で、ピカソは日本人でもとても馴染み深いよね。でも、ピカソ美術館って、パリにもあったよね?
節子:
そうなの。ピカソ美術館は、パリをはじめとしてフランスの外にも、生誕の地、スペインのマラガなど、いくつかあるんだよね。その中で、バルセロナのピカソ美術館ではパリに拠点を移すまでの、ピカソが若き日の多くの時間を過ごしたバルセロナでの初期の作品を鑑賞できるんだよね。「青の時代」をはじめ、ピカソの作品の変遷を体験できるおススメスポットだよ!
友理子:
それはぜひ皆さんにも行っていただきたいな。早速ピカソ美術館のバリアフリー情報を見ていこう。
バルセロナ ピカソ美術館はゴシック地区(El Born)に位置し、5つのゴシック様式の宮殿が改装された美術館なのです。でもしっかりバリアフリー対応がなされているよ。
節子:
ピカソ美術館は、2つのエレベーターがあって、車いす対応されているのが特徴だね。1つは主要な作品のあるフロア。もう一つは企画展などがあるフロア。フロアの間には数段の階段があって、スタッフに声をかけてくださいという案内もあるよ。
友理子:
すごい大きそうなエレベーターだね。私最近、車いすが大きくなっちゃったから、いつもエレベーターで困っちゃうんだよね。小さいエレベーターには乗れないけど、ここのエレベーターなら安心して乗れそうだね。
節子:
展示フロアもフラットで鑑賞しやすいよ。あと、バリアフリートイレも1階のメイン通路とレストランのテラス席の2ヶ所にあるんだよね。ただ、トイレを利用するためにはチケットのQRコードが必要で、カメラにかざして鍵を開けて入る仕組みになっているよ。
友理子:
そうなんだ。外部利用ができないから注意が必要だね。海外ではよく鍵がかかっていて、お願いすると開けてもらうスタイルが多いよね。割とどこの国でも見かける気がする。やっぱり不正利用とか不審者とかを管理するためには必要なのかなと思ったり。
節子:
そうだね。やはり、日本のような誰でも使えるトイレは、こっちの人には驚かれることもあるぐらいで、バルセロナの地下鉄駅も公衆トイレがないんだよね。その点、レストランやお店にはちゃんと車いす対応のトイレがあることが多いね。お客さんとして利用したお店や施設で使えるというのが一般的だよ。
節子:
お土産ショップも問題なく利用できるし、美術館の1階にあるレストランは広々とした空間で、待ち時間や休憩に最適だね。
友理子:
やっぱり美術館とか博物館とかって、鑑賞するだけが楽しみじゃなくて、ショップとかカフェとかその空間を楽しめるのが嬉しいんだよね。だから、どれだけその雰囲気を満喫できるか、そのスペースを快適に回遊できるかが大きなポイント。一緒に行った人と同じように楽しめるかどうかを考え尽くされていると、すごく嬉しく感じるよね。
ピカソ美術館は、ピカソの作品がたくさん展示されていて、市街地にあって観光に最適な場所です。ぜひ読者の皆さんもバルセロナに行った際は、ぜひ訪れてみてください。
▶ピカソ美術館のバリアフリー情報はこちら
節子:
ジョアン・ミロは、日本人にはダリやピカソほどの馴染みはないのかもしれないんだけど、ぜひ日本人の人にも知ってもらいたいなと思う。カタルーニャ生まれの世界的な芸術家、ジョアン・ミロは、カタルーニャ人にとって誇りとも言える象徴的な存在なんだよね。「ミロ美術館」は、ジョアン・ミロの色彩豊かな絵画、彫刻、タペストリーを堪能できるからオススメ。
友理子:
そう聞くとますます今回、時間的にも体力的にも訪れることができなくてショックというか、悔しいな(笑)。どんな感じのところなの?
節子:
ミロの親友であり、カタルーニャ出身の建築家ホセ・ルイ・セルトに設計を依頼した、ミロこだわりの建物なんだよね。展示物だけではなく、建築が好きな人も楽しめるんだよ。ミロ美術館の嬉しいところは、全部スロープで回れる所だよ。
友理子:
そうなんだよね、美術館や観光地に行って、良く起こるのが、車いすに乗っている私はエレベーターを使うために、動線が異なってしまい、みんなと一緒に鑑賞できないということが起こるんだよね。せっかく一緒に行っても、一度みんなと別れなくてはならないか、順序が変わったりする。もちろん古い建物を改修したりして、バリアフリーに対応してもらっている分、仕方ない事ではあるんだけど、こうして車いすでも自然に一緒に行った家族や友達と見て回れるというのは嬉しいね。
節子:
館内はベンチがたくさんあって、座って鑑賞できるし、カフェも併設されているから、ゆっくり過ごすことができるよ。バリアフリートイレも1階にあってキレイだったし、実際に車いすユーザーの人もいたよ。
友理子:
そうだね。やはり、その町がどれぐらいバリアフリーかどうかを推し量るには、どれぐらい普通に車いすの方々を見かけるかどうかだよね。自然と溶け込んでるなんて本当に素敵。
節子:
カタルーニャ美術館(Museu Nacional d’Art de Catalunya)は、スペイン・バルセロナにある美術館で、特にカタルーニャの美術作品が充実しているよ。1929年のバルセロナ万国博覧会のために建設されたパラウ・ナシオナル(Palau Nacional / 国立宮殿)を、1934年に美術館として改築した施設なんだけど、この歴史的な外観からは想像できないくらい、バリアフリー対応が徹底しているんだよね。
友理子:
確かに、丘の上に立つ圧倒的な壮麗さを見ると、きっとバリアフリーじゃないんだろうな、と想像してしまうな。この美術館には行ったことないけど、車いすでも行けるんだね。
節子:
スペイン広場からは階段で登っていくのは難しいから、バスかタクシーで近くまで行くのがオススメ。車いす用の駐車場もあるよ。
友理子:
近くまで行けたら、そこからは車いすでも問題ないんだね。
節子:
もちろん、中に階段はあるんだけど、段差解消機がつけられていて、車いすでも全ての展示スペースに入れるようになっているんだよね。ちょうど訪問した時も高齢者の車いすの方がスタッフのサポートで利用していたよ。
友理子:
そうなんだ。細やかな対応、素晴らしいね!古い建物はなかなかバリアフリー化が難しいけど、こうして対応してくれているのはうれしいな。
節子:
他にも、車いす以外では視覚障害の対応が最先端という印象を受けたよ。建物の模型や、点字や凹凸でわかる触知図案内板があって、建物の全体像から詳細まで、視覚障害の方が把握できるようになっていたよ。
友理子:
バルセロナやカタルーニャ全体で視覚障害対応がしっかりされているんだね。素晴らしい!
節子:
そして更に素晴らしいのが、作品説明板。主要な作品には、点字説明や音声案内に加え、作品に凹凸があって、触って作品を感じられるようになっているんだよ。作品の大きさがわかるように、人と作品を比較できるようにもなっていて、視覚障害への対応が徹底していたよ。
友理子:
この案内板、足元がちゃんと車いすでも入るようになっているね!視覚障害だけでなく車いすの人のことも考えられていて嬉しいな。
節子:
ここは、中世から近代美術まで、カタルーニャの歴史と文化を一度に堪能できる、まさにカタルーニャの美の殿堂です。読者の皆さんも、地元の芸術や文化に触れられる美術館をぜひ体験をしてみてください!
▶カタルーニャ美術館のバリアフリー情報はこちら
節子:
ミロ美術館とカタルーニャ美術館の最寄りの地下鉄「エスパーニャ駅(Espanya)」は、残念ながら数少ない車いす対応されていない駅の一つなんだよね。それに丘の上にあるし、路線バスとかツーリストバスで行くことをオススメするね。
友理子:
ツーリストバス、効率的に市内を回れるからいいよね!他にもバルセロナには美術館や博物館が沢山あるし。
節子:
今回触れられなかった「ダリ劇場美術館(Teatre-Museu Dalí)」は、バルセロナから高速鉄道で一時間程、フランス国境に近いフィゲラスという街にあるよ。ここも本当にオススメ!
読者の皆さんも、ぜひカタルーニャの美術館に足を運んでみてください!
1980年千葉県生まれ。進行性の筋疾患による遠位型ミオパチーによる中途障害者。電動車いす利用者。一般社団法人WheeLog代表理事、NPO法人ウィーログ代表理事およびNPO法人PADM(遠位型ミオパチー患者会)代表。2014年にYouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」開設。2017年にバリアフリーマップ「WheeLog!」アプリをリリース。“車いすでもあきらめない世界をつくる”をミッションに活動を展開する。Googleインパクトチャレンジ グランプリ、STI for SDGs文部科学大臣賞、国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰、MIT Solve Solver Teams、ドバイ万博 Expo Live Global Innovator、国内外で多くのアワードを受賞している。一児の母。
1983年千葉県生まれ。2004年にイギリス・グラスゴー大学に留学。2007年、創価大学卒業。2010年、第36回日墨交流計画研修生としてメキシコ国立自治大学に留学。学生時代にヨーロッパ各国を旅行をした他、フィリピン、アメリカの短期留学、デンマークと中国でのインターンシップも経験する。2012年、結婚を機に渡西。2014年、日本建築家協会(JIA)の推薦を受け欧州大学マドリッド校(European University of Madrid)大学院を修了し、建築修士号を取得。2016年より5年間、日建設計バルセロナ支店でカンプ・ノウ スタジアムの改築の建築計画・設計に携わる。2023年からWheeLog事務局に加わる。二児の母。